上の空/小原あき
空が割れたような音がしたので確認すると、飛行機が近いところで飛んでいた。
わたしに白いお腹を見せているけれど、わたしはそれを雲とは間違えない。
どこから、何時の間に、こんな近くに来たのだろうと思った。
よくよく見ると、空には割れ目があって、もうひとつの空が顔を出していた。
慌てて割れ目を塞いでいたけれど、もう手遅れだと思う。
それからわたしはずっと、もうひとつの空のことを考えている。
いつも通りに洗濯物を干している時も、犬の散歩に行く時も、夫婦の営みの時間も、ずっとずっと、ちらりと見えた、もうひとつの空のことを考えている。
これが上の空というのだろうか。
よくわからないけれど、もうひとつの空に行くために、わたしはパイロットになろうかと、少し本気で考えている。
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