風の足跡/かいぶつ
風が吹き
細い音を立てながら
僕の体が擦られる
鳥が大きく羽ばたく音
振り返ると
木葉のように舞い落ちる
一枚の羽
すでに鳥の姿はなく
もう空を優雅に
仰ぐことのない
一枚の羽だけが
地面を跳ねていた
風は僕を選ばなかった
柔らかな喉と
軽やかな声を兼ね備えた
鳥だけを空へ誘った
遅々としたリズム
だが確実な足取りで
一人の老婆が僕の目の前を横切って行く
濡れた地面に模られてゆく
小さな足跡
彼女もかつては
空に憧れ
風に選ばれることを待ち望んだ
一人の少女
空は徐々に
快晴へ近づき
ぬかるんだ地面を
乾かしてゆく
老婆の足跡が
そこへくっきりと
残されてゆく
一つの小さな軌跡が
刻さてゆく
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