童話(春告鳥)/たもつ
 

数学者は
0より小さい100の存在について考えながら

歯を磨き
大学前の坂道を登り
故郷の母親に手紙を書きます

今日は
0より小さい100の存在を確認するため
のみ市で
中古の天体望遠鏡を買ってきました
それとフランスパンを

数学者は思っています
もし
0より小さい100の存在が確認できたら

10年前に別れた
白夜の地に住む恋人を
迎えに行こうと

0より小さい100は
春告鳥とともに



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