ギラギラの爪/佐々宝砂
 
ウツムイテナメルアシが玄関先まで来ているらしい。
夜だからなと思いながら玄関の灯りを消し、
錠をかけて小さな覗き窓に片目を当てる。
何も見えない。
明日の朝、ウツムイテナメルアシの、
いつもの静かな贈り物が見つかるだろうか。
ウツムイテナメルアシの姿を見るのはあきらめて、
わたしは台所でそうめんを茹でる。
ソラニトケル山で採ったヤマドリノアシを細かく刻み、
冷水で洗ったそうめんにふりかける。
ヤマドリノアシは少し辛くて、少し渋い。
ひとりで食べるそうめんは冷たくて淋しくて、
だけどなかなかおいしかった。
そのうち夜も更けてきたから、
左の小指の爪を研ぐことにした。

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