鬼火/星月冬灯
 

 この世に未練を

 残した人間(ひと)が

 眠る墓には

 鬼火が出るという


 男にすてられた女

 母にすてられた幼児(おさなご)

 息子に殺された父


 死ぬに死にきれない

 亡霊たちが

 深い闇に支配された刻(とき)

 その思いの深さに

 迷い出る


 うっすらと今にも

 消えそうに

 冬の冷たい風に

 吹かれて

 淡くさえ見える

 業火

 けれど消えたりはしない


 死者たちの念が

 強ければ強いほど

 ちりちりと燃え続ける

 弱そうに見えるのに

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