ナベくんへのながい返事/かんな
 
くん、が保健室に居残ってはいけない理由が
ひとつくらいはあったかもしれないね。
ふーん、面白いね。って、
私の返答をナベくんはそんな風に言っていた。

  

「かんちゃんはさぁ」

早朝七時半。ナベくんは何気なくやってきたね。
生物準備室に。何気なく扉を開けて。
ひとり教科書を開いて、シャープペンシルをくわえて、
ぼーっとしている私の前にイスを持ってきては話し出した。

町の文化会館で、
山田かまちの作品を集めた展示会をやっているという話。
そういえば、図書館にいったときにそんなポスターを見た。
十七歳でこの世を去った彼に、
私とナベくんは興味を持った。

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