隔離病棟。/鯨 勇魚
 

ためらいがちな足音に、
黒猫がライ麦畑を横切るかと思えば、
まあるくなり、
ひだまりのにおい。
そのままの、ひだまり猫は、
午睡したまま、動こうとしない。
向日葵の群生。
その下を駆け抜ける、
むぎわらぼうし。
陽射しを避けるように。

遠い夏の風景は、
すでにその風景の中の、
ひとこま。に、なってしまう。

幼い日の記憶。
朝顔の花をむしったなら、
雨が降る。
なんて教えてくれたのは、
眠りのふちで、
巻いたしっぽを、
はたはたさせている。
ひだまり猫が、
懐かしいものは、
あくびのように、
わけのわからない涙。
(疑問からの憶測。)

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