兵士/星月冬灯
ここに歩き疲れた兵士が独り
ただ前を見て歩いてきたけれど
突然前が見えなくなった
暗い闇に引きずりこまれて
ふと気付くと
ただの独りぼっち
友人もいない
家族もいない
おかしいな
どこではぐれたのだろう
どうにかしてその訳を探すが
いっこうに解らぬ悲しい心
今思えば
前を見ているようで
前を見ていなかった
先を見ているようで
先を見ていなかった
総ては自分よがりで
周りの意見など聞かずに
ただ己の欲のために生きてきた
ああ
人間とは
悲しい欲の塊
それこそが我が生命(いのち)
我が宿命(さだめ)
信じていたものは
もう前にはない
一歩を踏み出せ
これからはおまえだけ
他には何も無い
冷たいしがらみの中
歩くしかない
我が生命尽きるまで
戻る 編 削 Point(2)