ミズタマイザー/N哉
 
「陽子、青いものー」

起立したまま微動だにしない私の横を、先生の質問はスルーと窓から外、遥か校舎の上空へ。まだわからない。分散しやすい意識をひとつ捕まえてはひとつ逃す、わざと。鳥かごのようなもの、例えば呼吸。

「春」

教室が湧いた、私は静かに呼吸する、それ以降私は黙って突っ立ったまま、先生が吐き捨てた「座れ」が気に入らなかったからではない、ここからしか見えない男子生徒の早弁に感動したからでもない、道はある、しかし選ばない、それが私の着席を止めた。

『虹はどうだろう』

私の畦道を作る、見たこともない景色が広がる。例えば頑なに着席を拒む私を先生が殴り、視界が真っ赤に破裂す
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