さよならの砂/石瀬琳々
 
夏のテーブルは渚
水のように陽だまりがゆれる
私の貝殻はここにあります
波間にさすらった熱い砂は
もうゆるくほどけて


あなたの胸に頬を寄せると
潮騒が聞こえます
時折 やさしく
時折 はげしく
静かに微笑んで下さい
陽射しがかげるまで


いいえ もう時間なのですね
心はまだあなたに残しているのに
秋がすばやく私にくちづける
涙がひとしずく伝ったら
それが合図のように


こぼれた砂を払って
あなたは歩いてゆく
私は目がはなせないでしょう
日焼けしたあなたの肩越しに
光る波が見えるように
いつまでもこの瞳で


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