色も無い/星月冬灯
 

 実の母なのに

 「おかあさん」と呼べず

 腹の底から憎み

 その存在自体を

 抹消してきました


 現在(いま)、独りになって

 孤独の中に立ち

 私は仄かな

 安堵を感じる


 ふわりと

 自然な笑みさえ

 零れ出で、


 白黒だった世の中に

 初めて色が

 付きました


 私は外道でしょうか

 母が死んだことを

 悦ぶ私は

 悪の子でしょうか


 ならば

 悪でも構わない

 この日を

 願わずにはいられなかった

 私を愚かと

 言うのなら

 それでも構わない


 世間(ひと)は知らない
 
 微笑んでいれば

 幸福(しあわせ)なのか


 他人(ひと)は知らない

 見たものが全て

 真実(まこと)なのか


 悔やまれるのは

 この手で殺められなかった


 ただそのことだけ


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