未来がまだ懐かしかった頃/木屋 亞万
真夜中の公園
テニスボールで
手遊びしながら
魂の友と話す
吸い込む息だけが
あまりに冷たいので
骨がひやりとする
電灯が月より明るく
ブランコを照らし
静かなので
女の声は頬から
男の声はうなじから
聞こえる
耳は茶髪のなかで眠る
テニスボールを
手首だけで投げ上げる
頭より少し高く浮かび
ブランコの高さは越えず
壊れて消えずに
落ちてきて
手の平にちくり
短い毛足と硬い弾力
会話の意味は
内容ではなくて
声のやり取り
取り入れるのが大事で
吐き出す事が肝要、だった
同じ夜に同じ公園で
洒落た雰囲気を
冷めた骨で味わうこと
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