ミーのこと/タマムシ
 
やせっぽっちの捨て猫だった

ミーミーないていたのでミーと名づけた
小雨が降る桜が散ったあとの公園だった

とても弱っていてミルクも飲まない
指先にミルクをひたして唇に寄せた
かたく閉じていた口がすこし開いて

ピンク色のベロが見えた
やっぱりミーだと思った

心配だったのでお医者さんに診せた
「二三日しか生きられないでしょう」と言われた
そんなところまでミーだった

強く抱きしめてあげることができないので
知らないうちに眠ってしまうまで見つめ続けた
はっとして目が覚めてまだ生きていることに安心した

写真を撮った
何枚も何枚もいろんな角度から撮った
忘れたくない記憶にしたくて必死だった
よろよろと歩こうとするけど転んでしまうミーだった

二三日が経ってしまった
ミーが動かなくなってしまった
動かなくてもそれはたしかにミーだった

わたしの手のひらに
すっぽりとおさまってしまうくらいの
小さな小さな

いのちだった
   
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