雨傷/有邑空玖
 

雨降りの校庭には
死んだ生徒の霊が出るから
連れて行かれないように
傘は深く差して
声を出してはいけない


理科室の前の廊下は
いつにも増して薄暗く
硝子棚の奥で
骨になったあの子が笑っている


上手く大人に成れなかった
プラスティックの赤い指輪が
まだ薬指で光っている
君を待ち続けているうちに
曖昧に成ってゆくあたしの輪郭
「禁じられた遊び」が
途切れたままのオルゴール


低く垂れ込める雲の果てに
青空があるなんて嘘


雨の日に死んでしまった子供は
天国へ行けないんだよ。

無邪気な戯言(ざれごと)も確かな呪いで

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