そと/
因子
硝子張りの角の席で
ふたつ前の席の男の人の
袖にとまった蝿だけを見詰めている私は
硝子の向こうへ降り続く雨に
「 」、
溶けていきそうです
東京の薄暗い雑踏は
不意に割れ目から流れ出して
直角になれなかったかなしい端から
傾いだ灰色のしかくい角から
白くはじけていきそうなのに
美しく確かなこの街では
他のすべてを差し置いて
私が溶けていきそうです
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