二重星季節 新章/木立 悟
 





ざらついた
明るさのない
明るい日
写真に
死者に
塗る色もない
そのままの日


岩と涙
価値あるものから伝わらぬ価値
あなたの漂着
あなたの波間
蟻と世界と
翼なきうた


押し寄せる群れ
はざまの光
花びらが苦しい
苦しくない
その器のくりかえしが
言葉なのか
巨大な無数の無のあつまりに
小さくほぐれゆく笑みなのか


あなたのひとつがあなたのひとつに
異なるものの重なりとして
他のいのちのかたちから離れず
けして多くはまたたくことなく
他のまたたきに寄り添いながら
他のすべてよりまたたいている



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