ろうそくのための/たりぽん(大理 奔)
鏡で色を盗むと
空は気圏のように薄らいでいく
ひかりだけで染められたセロファン
退色した虹がいろどる夜
沈黙ではない静かな
月光の耳鳴り
声は聞こえるものだろうか
それとも伝えるものだろうか
文字は伝えるものだろうか
それとも刻むものだろうか
手を伸ばしても
届かない
微笑みが封印する
かすかな篝火
灯りの結界
目の前で揺れていても
手の届かない
ろうそくのための夜
鏡では盗めないもの
こえはとどいただろうか
刻むようにささやくと
ほのおはかすかに揺らめき
篝火を盗んだ瞳が
濡れた月光のように
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