ザ・ブーンンンン/砂木
次のエスカレーターに並んで乗り
彼女の耳元に彼はささやいた
急にこんな所で 何を言ってるの
彼はエスカレーターを走って降りた
五階から出口のある一階の下りの最後で
両手をひろげて待っている
通りすがりの人が 物知り顔で通り過ぎる
にやにやと 笑う人もいる
ひどい ナンパじゃあるまいし
一生に一度のプロポーズを こんなこんな
試されている まだ浮気を疑っている
両手をひろげた彼にたどりついた彼女は
彼を見ずに店を出た
汽車の時刻がせまっている
駅へ 二人は行くしかなかった
離れて座った彼女の隣りへ彼が座る
おみやげの入ったビニール袋が
がさが
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)