ベンチプレス/よーかん
 
ですもんね。」
「ありがたいことに、今はそうだね。」
ウェートが音を立てないようにハンドルを丁寧に離すと、須川はスタッフをチラリと見て、この男の名前なんと言ったか思いを出そうとした。
「では、また何かあったら言ってください。」
須川の表情から居心地の悪さを読み取ったらしく、気を使い若者が会話を早く切り上げようとした。須川もそれに気づき何か言葉を返そうとして思いを巡らせる。
「あっ、あのそこで走ってる青年さ。あのままだと、足首を痛めるんじゃないかな。正しい走り方を教えてあげたほうがいいかもしれないよね。」
スタッフは須川の目線の方を振り返ると、ウォーキングマシンでドタドタと走る青年に気づ
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