海になる/
緋月 衣瑠香
優しい言葉たちは脳裏にいつかの海の記憶を焼き付ける
あおい、せかい
すべてがうまれた、ばしょ
そのことばも、
そのうたさえも、
すべて、わたし
すでに体の水分は海水のみとなった
私の両翼はすべてを抱きしめる準備ができた
満潮だ
私はかつて私であった一メートルと五十センチあまりのものを
そっと抱きしめた
海の底には月に照らされる花火の欠片が転がっていた
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