刺痕/Affettuoso [アフェットゥオーソ]
と
そんな あなた と
そうやってできる あお を
ずっと
みていたかったの
§
きみを刺したイソギンチャク
今日もきっと
クマノミと
暮らしてる
生きること知らずに生きて 死ぬこと知らずに死んでゆく
人もそうであれば、ね
クマノミと
暮らしてるだけでいれば、ね
イソギンチャクはそれでいいし
僕もきっとそれでいい
僕はばかだけど きみより いいものなんて知りたくないんだよ
きみもそうであれば、ね
§
明日になれば
きみを刺したイソギンチャク
きっとクマノミと
暮らしてる
たくさん暮らしてる
そんな海を
僕はスケッチブックに描いて
何枚も何枚も
海を紙に閉じ込めて
きみは隣でずっと
パステルを弄んで
時々 思い出したように刺されたところを僕に見せて
僕はそれを
やさしく撫でて
それから
きみの刺された痕を
きみの褐色の目を
きみの艶やかな唇を
きみの淡い頬を
きみを
ただ きみを 蒼いパステルで 描く
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