夏の終わり/吉田ぐんじょう
 
しかしたら夏の間じゅう
何か透明なものがこの家で
遊びまわっていたのではないかと思う


夜歩きをするときは棒を持つことにしている
路上を歩くと必ずどこかに
西瓜が置いてあるからだ
周囲に誰も居なくとも
わたしはきちんと棒を軸にして十回まわり
はんかちで目を覆ってからそれを割る
そして歪な破片を食べる
あまり静かなので
まるで人を食べているような気持ちにもなる
街灯の下に浮かび上がる真赤な果肉は
グロテスクだが不思議と綺麗である

きょうはすいかわりをしました
なつのおもいでができました
と呟いて少し笑う
見上げると満天の星空だった
どこか遠くで
風鈴が りいん と鳴ったような気がした



戻る   Point(18)