詩人のシノギ (薄田泣菫の巻)/みつべえ
わがゆく海
わがゆくかたは、月明りさし入るなべに、
さはら木は腕(かいな)だるげに伏し沈み、
赤目柏(あかめがしわ)はしのび音に葉ぞ泣きそぼち、
石楠花(しゃくなげ)は息づく深山(みやま)、――『寂静(さびしみ)』と、
『沈黙(しじま)』のあぐむ森ならじ。
わがゆくかたは、野胡桃(のぐるみ)の実は笑みこぼれ、
黄金(こがね)なす柑子は枝にたわわなる
新墾小野(にいばりおの)のあらき畑、草くだものの
醸酒(かみざけ)は小甕(こみか)にかをる、――『休息(やすらい)』と、
『うまし宴会(うたげ)』の場(にわ)ならじ。
わがゆくかたは、末枯(う
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