蝉とコロッケ/yuma
だ。音も無く殻を開き、息をしている。それを蝉は、一心に見つめる。生きている。いいなあ、と思う。
この、しじみの砂抜きをしているときが、それを眺めているときが、蝉にとっては最も幸福が感じられた。他の人間がどうなのかはわからないが、しじみの呼吸を眺めているときほど、穏やかな気分になれることはなかった。
(中略)
それからまたしばらくの間、しじみののんびりとした、静かな生命のしるしに見惚れる。
}
そうか。コロッケじゃなくて、あれはしじみの話だった。
自分が小説の人物の一人に成れたような、そんな気がしたのだけれど。残念。
いや、待てよ。しじみとコロッケは別物だけれど、それを俯瞰で見ている構
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)