乾いたひと/恋月 ぴの
永遠に交わらぬはずの者同士が
交わろうとする
水と油
そんな感じで
高温にまで熱せられた油は
邪険にも寄せる思いを弾き飛ばして
ふつふつと
行き場の無い怒りに震えている
誰が悪いって?
わたしなの?
満たされることの無い乾き
苦しくなるほどに抱きしめあって
求め合って
あなたの息遣いを奥深く受け入れたはずなのに
わたしの身体は乾いている
乾ききってしまっている
あなたに殴られた頬の痛み
殴っても
殴られても
何かを満たすことなんてありえないのに
あなたの固い拳と
わたしの腫れあがった左頬
神田川に
幸せだったあの頃を捜し求めてみた
面影橋から望む黒い流れは
あまりにもそっけなく
見られまいと頬を隠した袖口の解れに
涙まで失ってしまったことを知る
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