名もない花/星月冬灯
 

 その花は不思議な色をしていた。

 白ではない、黄色でもない、まるで

 光(ひかり)のような明るい色をして
 
 いる。

 母のアリサは「名もない花」と呼んだ。

 
 花は太陽に翳すと眩いまでに光り、

 熱を発した。生い茂る青々した木々を

 照らし、温かさを生んだ。また、野に生え

 る雑草さえも生き生きと甦えさせた。

 光りはどこまでも伸び、大地や大空に

 自然の息吹を与えた。どこまでも暖かく

 優しい小鳥の囀(さえず)りのように。

 
 月の明りに照らすと、花は涙を流した。

 透明な、綺麗な涙を。その雫はやがて
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