『水泳少女、遊泳セヨ!』/川村 透
 
学校の坂を
手をつないで駆け降りると
二人は、体ごと海になった。


作務衣のまま飛び込んで重く
泳ぎ疲れた僧侶は
制服を脱いで藍色の水着になった少女を
波打ち際に横たえる

少女は目を、閉じる
僧侶は魚のように上下する少女の胸で濡れた貝殻を砕く

学校から聞こえてくるのは潮騒ラジオ
≪サーフィン・USA≫耳にあてた貝殻、かゆくて
「ササエル」、から、「ツタエル」へ
始まる、魚の時間
銀の声が告げて、ホイッスル!


「水泳少女、遊泳セヨ!」


「水泳僧侶、遊泳セヨ!遊泳セヨ!」


胸元で声が蟹になるまで水をしたたかに飲んでむせかえる
太も
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