或いはまたほかの上官からすでに彼はダメだと烙印を押されていながらも、なお自分では無心に空しい努力をしている兵隊を見る時、可憐だと思う。彼らにだって彼らの世界はあるのだ。彼らが誇りかに自己主張する場面もあるのだ。少なくとも彼らにはその愛する父或いは母、兄弟をもっているのだ。そして彼らが誠実であるにもかかわらず、彼らの才能の低き故に彼らは低く評価され、不合格の批評を受けねばならぬ。 「きけ わだつみのこえ」より