時と夜/木立 悟
 



音の闇があり
むらさきがあり
白い泡を染め
闇を抜ける


夜の会話が屋根を歩き
窓から入り
まばたきに驚き
再び出てゆく


夜に咲く花と脇道
小さく手を振る気配のあつまり
銀は静かに行方を指す
背をたどる背のひとつを照らす


羽の下で夜は鳴る
羽は重なり
音は蒼く
羽の下で夜は増す


魚が空を巡り終わり
そこにいないものの言葉を受け取る
誰も共には巡り得ない
百年後には誰もいない


光に沈むひとつの音が
雨の音を見つめている
光は常に近く
近くは見えない


会話はまだ屋根にいて
鴉のように動きまわる
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