ふたり映画/ザ・凹凸目目
 
監督は言っていた
そうなのだ
僕の現場ではカメラのあっち側に一人か0人しかいないから架空の沢山の人が問題になってしまうのだ
というか問題にしなくて良いのだ
僕らはカメラの視線だけに耐えればいいのだ
無意識のうちに増量する架空の視線を意識的に排除し、僕は今晩の僕たちの視線を意識する
それがこの現場でのカメラの視線の重み
僕はもうカメラを見つめる必要はない
これでよし


あとは顔がこわばる彼女にこのことを上手く説明しなければいけない
カメラが支点になって僕らと僕らが上手く釣り合うなんて説明してもわかってもらえないだろうか
「カメラの向こう側にいる今晩の僕たちのことだけを意識して」
なんて言ってもダメだろう
無意識の重みを降ろしてあげないと
となると僕の思考をいちいちなぞって言ってあげないとダメだろうけどそれでもダメかもしれない
でもなんとか説明してそれでもダメならなんとかカバーしてあげよう
主演、監督、脚本の僕の、それが役割だ
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