白濁/北村 守通
放物線を描くでもなく
ぽつりと堕ちた
アブラ蝉に
少女は黙って花を添えた
花の名前を私は知らない
しばらくすると
またぽつり
それからしばらく
また
ぽつり
一軒一軒
丁寧に
確実に
少女は黙って花を添える
花の数を私は知らない
気付けば
乾物の感触に
足下見れば
これから
花を添えられる筈であった
一かけら
否
もと一匹
滴る汗に
見上げれば
太陽の中に
少女が一人
歪む視界に
少女が一人
確かに立っていた様に記憶している
少女の名前は
誰も知らない
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