豊田さんが泣いちゃった。みんながなかなか死なないから。/青木龍一郎
 

君は、薄暗い路地のような場所で
泣き
叫び
痛い痛いとわめいているのだろう?

君は僕の知らないところでボコボコに殴られている。
それなのに、僕はそんなこととはつゆ知らずに、マヌケに鼻糞をほじりながら好きなアイドルのでているテレビを眺めている。

君が痛い痛いと泣き叫んでいても、僕の部屋のテレビから流れる笑い声でかき消されちゃうんだ!
でも、本当は僕が耳を塞いでるだけなのか?
掛け布団を被って、目をギュッとつむって、ブルブルブルブル。してるだけなのか?
そしたら僕は本当に無力だ。

家の前で誰かが殺されても、それから目を背けるために
必死で見ているテレビに全神経を
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