空蝉/紫音
 

どこに行くのか
または 行くべきなのか
こたえなどないままに
煙を吹かしながら
ただ
さまよい
あるく
ある


手紙を書くこともなくなり
すっかり言葉も忘れてしまい
もう
見たいものを見る術もなくし
あるがまま見えるがまま
惨めになってしまった
すばらしい
毛穴という毛穴を開き
腐臭を放ちながら
前など見えず
後ろを振り返らず
わき目もふらず
無心にあるく
綺麗でも華麗でもなく
泥臭い心こそ
嘘くさいものごとをこそ
見据える真実が浮かび上がる
過剰装飾のラブホテル
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臭う
香しいほど
そこは人ではなく動物のワンダーランド
オリジナルなどなく
パッチワークのように
ありとあらゆるものを繋ぎ合わせた
蝉ほどの純情さも持ち合わせていない 色香の世界

暑さで溶けてしまわないよう
走り続けよう
あと何十年か
消え去るその日を得るまで
蝉は抜け出てしまったが
殻ほどには人の形であるうちは

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