ホットミルク日和のゆったりとした空気の中で/詩集ただよう
言い、カップにくちづけた
少し目をつぶり、両手で口へと運ぶその仕草が、私に愛しさを教えてくれた
私はカップがぬるくなるのを待っていた
そのとき飲んだホットミルクは、ゆったりとした触感を口の中に与えてくれた
そんなホットミルクを飲んだ日は私の人生ではあの日しか知らない
彼女が昨日、八十一年の人生に幕をおろしたという
家族に看取られ、布団の中で
悲しい感情にはもう慣れた
悲しみは記憶から波のように打ち寄せる
だから記憶はやがて薄らぐ
それでも私は決して忘れたくはない
そして私は私と彼女の八十年を喜ぼう
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