暮らすように歌う/小原あき
彼女は歌が上手い
流行りの曲も見事に歌いこなす
だけど、彼女は歌わない
だから、わたしは気分が沈まないように
自分で歌う
彼女はそれを
気持ち良さそうに聴いてくれる
彼女の歌はどこでも聴ける
彼女と初めて会った学校を卒業して
互いに別々に就職して
わたしは永久就職した
それから二年後
彼女も永久就職した
彼女の選んだ人は
(人は選んだり選ばれたりする、と思う)
彼女の歌を聴いても
前だけを見ているような人だった
わたしはこの人なら
彼女の歌を
ヒメを
すべてを理解してくれるだろうと
余計なお世話だけど
感じていた
彼女の歌はどこでも聴ける
彼女の結婚式も例外ではなかった
彼女は歌った
教会の十字架の前で
わたしたちの前で
両親の前で
花婿の前で
彼女の涙の中には
ヒメが笑っていた
彼女の歌はどこでも聴ける
彼女は
暮らすように歌う
即興ゴルコンダ投稿作品を改稿した作品
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