水の落とし子/餅月兎
 
欲望は眠りこけて
苦痛が姿を消しているとき
其処に幸せがボヤ〜っと突っ立ってる
乱反射する日常の事務と
隙間なく入り乱れた選択の連鎖のなかで
時々息苦しくなり
ぼくらは空気を求める
夏の真昼の池の鯉
どこかにある境界線を探して
そしてまた潜って行く
忙しい幸せの中へ
それは

ため息に繋がれた
大事な時間
大事な体
誰の時間
誰の体
いつから
いつまで

いまぽつぽつと
湿ったにおいと共に
雨が波紋を作り始めた古い池で
鯉が空を翔ぶ
馬鹿げた可能性を
もう少し
弄んでいたいのだ
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