海のアルバム/佐野権太
国道を南下すると
海がひらける
それは
わかっているつもりだった
潮の香りがしている
目を細めて見つめている
+
波打ち際で
砂をかく
砂をかくと
掘り起こされてしまう
いくつもの栞
からめようとした指先を
さらってゆく、波
+
午前の海を背に抱いて
浮かんでいる
爽涼な空のキャンバスを
斜めに走る雲ひとすじ
銀に輝く小さな機影を
どこまでも追いかけている
+
色とりどりの
魚図鑑をひろげている
あれは
ハギのなかまであったか
ひらべったい体をくゆらせて
水色の光線をくぐって
+
君の絵日記は
レンズ越しみ
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