海のアルバム/佐野権太
 
国道を南下すると
海がひらける
それは
わかっているつもりだった
潮の香りがしている
目を細めて見つめている

+

波打ち際で
砂をかく
砂をかくと
掘り起こされてしまう
いくつもの栞
からめようとした指先を
さらってゆく、波

+

午前の海を背に抱いて
浮かんでいる
爽涼な空のキャンバスを
斜めに走る雲ひとすじ
銀に輝く小さな機影を
どこまでも追いかけている

+

色とりどりの
魚図鑑をひろげている
あれは
ハギのなかまであったか
ひらべったい体をくゆらせて
水色の光線をくぐって

+

君の絵日記は
レンズ越しみ
[次のページ]
戻る   Point(17)