水の扉/千波 一也
 

コンクリートの隙間へ
手をひたすとき、

かなしい人魚の
ほほえみが
過ぎる

その、
行方を追いかけやめた目の
放ってみせる空には
青のにじみが
よく似合う



すぐにも
こぼれ落ちそうな
涙をおよいで、

街は
きょうもまた
波間を乗りちがえてゆく
まっすぐに

きれいな虹の
罠にかかって
まっすぐに



体温を
はじめておぼえた
メロディーは、

ブルー、
または、ブルー

海ゆく鳥が
さかさまに捨て去る
つぼみの向こう、

ひかりは惑いを
満ちてゆく



澄みわたるなら、
鏡のために

無数に
くだける
いざないのため




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