空と魚/木立 悟
 
また点けてしまった
どこまでも平穏な
枠の内に憩う人々

焼いていい
抱いていい
いつまでも胸に残るのは
粉の大きさのものだけだから

遅れてゆく
山とばすつばさ
海まげるつばさ
遅れてゆく



馴れてはいけない場所に馴れて
(光の渦は光でも渦でもなくまわり)
ひとりはひとりに噛み与える
(去られるばかりなのに笑んで)

笛を聴いている
音の奥にも
かたちの奥にも何もないのに
笛は響きつづけている

もう宝石はないと歌っている
(咽の痛みは消えたり現われたりする)
多くの観客が席を立った
(蒼い光のなか歌だけが夜のままでいる)



陽に褪せて道は消えかけ
わずかな光の線となり
別の光にたなびいて
たなびいてたなびいて消えてゆく

くりかえし濡れ
くりかえし乾き
影はやがて肌になり
街を閉ざす街を滑る



喩えたちが入れない野に
そのままの名はそのままに在り
海へゆくもの 空めぐるもの
草に埋もれた標を照らす


















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