空と魚/木立 悟
 





音の陰の音たち
ゆうるりと振り向く
何もない場所に
署名はかがやく



落ちそうな首を片手で支え
どうにか眠り
どうにか覚める
音を見るたび さらに傾く

丸い紙やすりが
触れるものもなく鳴っている
曇の魚がひとり 空を覆い
考えないように考えないように泳ぎつづける

水を吐きながら
空の終わりを記しながら
何も考えていないはずなのに
憎しみばかり 悲しみばかり在り響く

おまえはそこを出ることはない
おまえはただそこにいていい
おまえはそこで焼かれてゆく
おまえはおまえのまま炭になる



また消してしまった
また
[次のページ]
戻る   Point(7)