耳煙草/木屋 亞万
 
押さえるように
両手で頭を抱えてしまった
思い悩んでいるように見えたが
すぐに深く吸っているのだとわかった
私の顔目掛けて一際濃い煙が噴出された

煙草の乾いた臭いのなかに
露に濡れた百合の匂いが混ざる
眩暈を起こすような芳香に
閉じた瞼が点滅していく
煙が晴れた頃には女は消えていた



まだ十八歳だった

かぐわしい
なまめかしい、女


古びた電柱
百合の花束
煙草一箱
ガードレールには
失せろ、馬鹿


戻る   Point(2)