朝のたべもの/佐々宝砂
 
新聞屋が朝刊を持ってきたけれど
鳥がやってこない
鳥がおりてこない
待っているのに

魂(たま)呼ばいのやりかたがわからない
どううたったらいいのかわからない
岸の向こうには駅があって
どおどおとうなりをあげて始電がとまる
わたしの家にはなにもとまらない
鳥はとまらない

川辺ではきっと
もう鳥たちがめざめて
朝のたべものをついばんでいる
それは亀の死体だったり
さっきまで泳いでいたハヤだったり
寒さにふるえるみみずだったりするのだろう

すっかり冷めた牛乳の表面に
うっすらと膜がはっている

どうか朝のたべものをください
この家に鳥はやってきません

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