僕はマゼランと恋をした/ブライアン
{引用=走れ、ジミー・デラクロイ、息はさんざん乱れ、横腹に針が刺さったごとくに痛んでも。何が迫ってきているのかと、振り返ってはならない。走れ、お前の足下の都市の輪郭がぼやけてくるまで、恐怖に、なじみの恐怖に駆られて走れ、故郷にたどり着いたことをお前に伝える恐怖に駆られて。車がきても止まるな、停止標識でも赤信号でも止まるな、寺院を見ていこうなどと思って止まるな、海岸霊園のお前の名が刻まれた貧民の墓石のかたわらでひざまずこうとして止まるな、墓場でスクリンクラーは塩っぽい水しぶきをふりまき墓標は夜になると飛び去る海鳥たちだ。
ケ・キエレス?
「僕はマゼランと旅をした」 スチュアート・ダイベック
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