不透明な夏/笹子ゆら
 
夏は不透明だ、と思いはじめたのは
考えてみれば最近になってからなのに
ずっとそんな風におもっていたみたいな気がして
どっちなのだろう よくわからない

喉にペットボトルの冷たい中身を流し込むと
身体が逆に熱気を帯びていくような、
そんな錯覚を、得る

  まばたきをすると
  暑さで世界が揺れていた
  ゆらゆら、ゆらゆらと
  溺れてしまいたい

なんで、夏だからといってみんな
そんなに輝けるのだろうか
気付いていない
こんなにもくすんだ季節だというのに
なにも見えなくなってしまうのに


手のひらが水滴で濡れている
近くで鳴いているはずの蝉の声がやけに、遠い

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