付き添う部屋を知らない/カンチェルスキス
 



 急ぐ足はコンクリートで固めて 消防車が来るより早く根を下ろす
 崩れ落ちて 天を仰ぎ見た 背もたれは腐って 朽ち果てていた
 火曜日の夜は 国道の渋滞で行き先を見失った
 コンビニの明かりが 素通りした
 心拍数かぞえるたびに ステンレスの引っ掻く音が聞こえる
 バラバラになったコードを束ねて ひと思いにそこで断ち切る
 いろとりどりの断面図 きれいに眺めた

 テーブルの上で嘘をついたミルク ぬるくなって
 膜がかった記憶 そのまま 腹の中にたまった
 どうしてだろう ふいの雷雨が 誰かを狙う
 バスの中で傘を差してる人を ふいの雷雨が 誰か狙う
 スピードを落としたメーター 座り込んで もうこれ以上は進まない

 輸血の必要な腕を持ってきて 棒だと思え 
 叩いても返らない皮膚の表面を思え
 ベッドから立ち上がる 横の水を飲んで 
 ボタンの取れたシャツのほつれを 抜き取る
 ステンドグラスの光 付き添う部屋を知らない





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