まぼろし/こむ
本当を言うと
おまえは 少し こわかった
祈るように欲得なく
好きというだけで
なにもかもほうりだして
入り込んでゆく おまえに
私が 壊されそうで
少し こわかった
それでも
おまえがいなくなってみると
ちぎられた肉 欠けた骨
切り取られた手足のように
まぼろしのおまえが 痛くてしかたがない
私が好きで 見ているのだ聞いているのだ
読んでいるのだ書いているのだ欲しいのだ と
次から次へ 手に入れた全てに
いつの間にか
あちこちおまえが入り込んでいて
きれいだおもしろいほしいうつくしい と
こころうごくたびに
まぼろしのおまえが 痛くてしかたないのだ
戻る 編 削 Point(4)