月の影 蝉の骸/プル式
 
絶命した蝉は最期にジュっと鳴いた
夜の電車の扉の側
踏み付けた男はそのまま電車を降りた
JRの片田舎の駅
ジュは呪術の呪だろうか
それは男に向けられたものだろうか
それを男にさせた無関心な僕へだろうか
そんな事をぼんやり考えながら
次の駅で電車を降りた
もしかすると そこが分岐点で
明日には僕は蝉になり
重い頭を地面に擦り付けているかも知れない。
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