思い出迷子/虹村 凌
 
何も考えずに叩ききった發を見て
彼女は少しだけ微笑んでいたのを思い出した
東京の空には星か輝いていて
中央線はとても込んでいて
君は椅子に座って本を読んでいた
「家に帰りたくない」
なんていう勘違いしそうな台詞を
上目遣いで言ったのを覚えてる
でも君が読んでいた詩集が何だったか
ずっと思い出せずに居る
不思議ハウスを建てる予定も未定のままで


渋谷のジョナサンでシンジは言ったんだ
「彼女の写真を持ってるよ」って
何の写真か聞いたら
「20歳の時に撮った写真」って言うんだ
体が綺麗なうちに残しておきたいって言う希望を
シンジは叶えてあげたんだって
その事実は俺
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