行方/木立 悟
鳥と世界が
左目を語ってやまない
他のものが皆
目を閉じている夜も
砂浜では
さまざまな色をした風が
透明な凧をあげている
砂の羽が
ひらいては散る
雲が波に近づく間も
羽は生まれ
散りつづける
凧は一瞬 砂に染まり
高く高く遠去かる
夜の虫が次々と
左目に飛び込んでは消えてゆく
空には星が
押しのけられたように遠い
雲のなかの凧
見つめる左目
砂の羽の林から
砂は滝のように落ち
海に黄金の柱を映し出している
見えない生きものにあふれた砂が
波に触れてはかがやきを噴き上げている
鳥と世界は語りつづける
空と砂浜の間を
閉じた目の夜を歩みながら
透明の行方を
左目の行方を語りつづける
砂の羽は芽吹くことをやめず
まだ午後の明るさの残る背を
林のむこうの緑へといざなってゆく
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