無温旅程/木屋 亞万
 
境界の融解
浸透圧にふやける、私



ひたすら流れ込む空気
苦く辛く濃縮された塊
、溶かしだしてしまう
守るべき塊なんてない
一つもない、私の内部
吸気排気換気、されて
私らしさの手掛かりは
一つ残らず消えてゆく



そして私は旅人になる
どこにも境界を持たず
温もり消え失せた魂を
存在に呼ばれるままに
遊ばせながら、透明度
の高い気を求めてゆく
行ける所はどこへでも
行けない所も紛れ込み



薄まっていく、私は
生活の中で再び濃く
味付けされてしまう
煮詰まり過ぎたなら
また旅に出て薄める
それが私の生きかた

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